歯科医院の広告はROASの観点で考える

ここ数回に渡って、来院後の患者様との関係性構築の話を書いてきました。

マーケティング=広告と認識している方からすれば、「???」という感じではないでしょうか。

是非過去の記事をご参考にしていただければ幸いです。



なぜ来院者との関係構築について書くのか。

それは、

①継続率を高める為のコストに比べて、広告での新患獲得は高単価

②CLが上がれば、通院頻度・自費率の向上に加え紹介が得られる

という2点です。

逆に言えば、この信頼関係構築の仕組み化が出来ていない状態で、コストをかけて新患を増やしても、栓のしていないお風呂にお湯を溜めようとするような物です。

ましてや、業界全体が苦しくなってきている今ではどこの医院も新患獲得の為の広告費が上がっていっています。

少ないパイを皆で取り合おうとお金をかければかけるほど、1件獲得するための単価も上がっていきますので、利益率を圧迫していきます。

出来る限り、その負のスパイラル(過去の記事では「近隣の競合との消耗戦」と書きました)から早く降りてしまって、自院へのロイヤルティの高い患者様の歯を、長く・頻度高く守っていく事をお勧めしたいです。


とはいえ、全ての患者様が通い続けてくれることはあり得ません。

患者様の求める治療と自院のありたい姿が重ならないのであれば、他の医院へ行ってみていただいた方が双方にとって幸せですし、逆に上手くマッチしていたとしても引越しなどで通えなくなってしまう患者様もいらっしゃるでしょう。

「そうして出来た空き枠を埋めるのが広告」と言うくらいの気持ちで広告に取り組んでいかないと、また消耗戦に飲み込まれてしまいます。


さて、では広告を出すにあたって、どんな観点を重視するのが良いでしょうか。

CPA(問合せコスト)なども勿論重要な指標ですが、歯科医院の規模と業態にあっている観点はROASだと考えています。

ROASとは、Return On Advertising Spendと言う意味で、かけた広告費に対して得られた売上をパーセンテージで表したものです。(1万円の広告で獲得した新患から2万円の売上が上がれば200%ですし、3万円の売上が上がれば300%です)

世の中的な広告ではCPAの方が一般的に語られやすい指標ではありますが、なぜROASが大切なのか。

それは、ただ単に新患の数を集めるだけの広告に依存するのは歯科医院経営にとって大きなリスクだと考えるからです。

もしも、自院とマッチしない患者様を多く含んだ集患をしたらどうなるでしょうか。

せっかく高いコストをかけて読んだ患者様のCLが高まらず結局、自院に定着しないミスマッチな状態が起きるのです。

定着しないから、また広告が必要になります。

そして更に、患者様が求めるものと医院が提供するものがズレているのでクレームなどのトラブルのリスクが高まります。ましてや、googleなどのサクラの少ない口コミに悪い評判ばかりが書かれれば、大きなダメージを追うことになります。

医院と患者様のミスマッチはこの部分だけを見ても大きなリスクを孕んでいるのです。


では一方で、ミスマッチが減り、CLが高まりやすい患者様を集患出来たらどうでしょうか。

早くに信頼関係が構築出来れば、自費率も上がりやすいですし、リコール率も高まります。

また、紹介の仕組みが上手く運用に乗っていれば、既存患者様が増えれば増えるほど、口コミの「口(クチ)」の数も増えていくので、良いスパイラルに入ることが出来るのです。


さて、指標の話に戻ります。

ROASは売上÷広告費×100で算出します。

患者様1人あたりの売上は来院回数×単価ですので、来院回数×単価÷広告費×100と置き換えることが出来ます。

例えば3000円のシステム利用料で1件新患が獲得出来るメディアがあったとします。ただ、媒体の仕立てが“歯が痛いときに今から行ける歯医者を立地(近さ)で選ばせる”仕立てだとします。

当然、医院のありたい姿やコンセプトよりもリアルタイムで予約が出来るか?が、重視されるUI(使い勝手)になっている為、中々CLが上がりにくい患者様とマッチングすることになります。

すると1本の治療で来なくなってしまえば、ROASは300%、500%で終わってしまいます。

一方で、1件獲得するのに5000円かかるものの、40%が自費診療になり、治療後も1年通じてメンテナンスに通院してくれる患者様を獲得出来るメディアがあれば、ROASは1000%にも2000%にもなり得ます。

更に翌年も通ってくれるのはどちらの患者様でしょうか。

お友達や家族を紹介してくれるのはどちらの患者様でしょうか。

つまり、CLとの相関が高いのは、CPAではなく、ROASであり、患者様、医院の双方にとって幸せな集客指標である事は分かると思います。

もちろん、広告の入り口を絞りすぎてROAS(売上÷広告費)の“広告費”の部分が大きくなりすぎてROASが悪化すると本末転倒ですので、そういう意味でCPAもモニタリングしていくべきですが、CPA単独では玉石混合の指標である事は覚えておいていただきたいです。


歯科業界に限らず、継続的な顧客(患者様)接点を持つ業界では同様の事が言えるのですが、得てして広告周りのアドバイスをする外部の業者やメディアの営業はCPAで語りたくなってしまいます。それは多くの場合、業者目線ではCPAの方がコントロールしやすく、手間がかからないからです。 

もしも今、CPAのみで広告を語っている場合は一度ROASまで掘り下げて会話をしてみてはいかがでしょうか。


また、コンサルタント様によってはROI(投資対利益)まで管理してくれる所もあるかと思います。そこまでモニタリング、改善のサイクルが回るようでしたら、そのまま続けて頂いた方が良いと思いますが、当方では

・利益指標よりも売上指標の方がCLとの相関が高くマーケティング指標として必要十分である事

・利益指標まで追うと月次支援のリソースの範囲内でカバーできずコンサルタント並みに支援料金が上がってしまう事

から、ROASを優先指標にする事をお勧めしております。


ただ、これらの指標を管理するとなると、患者様ごとに来院経路を記録し、経路ごとにデータをまとめて分析をしていく必要がありますが、エクセルなどでデータの吐き出しが出来れば、ある程度簡単な仕組みにしていく事は可能です。

今回は広告の捉え方、管理指標の観点について書きましたが、実際には広告の内容もこれに応じて意図を持って改善し随時モニタリングをしていく必要があります。

モニタリング体制の構築や、運用に乗せることも月次支援の範囲内で行っております。

是非下記のフォームからお気軽にご相談ください。

with屋

歯科医院向けマーケティングパートナーのwith屋。 歯科医院のマーケティング改善の提案・伴走支援を行っています。 マーケティング戦略~企画・実行・改善までを支援し、一貫性ある患者コミュニケーション設計が可能です。 コンサルティング・アドバイザリーに閉じず、実装までを“提案の主体者”として伴走するため、「実行」のハードルが下がります。