歯科医院に来院するまでの“患者心理”で広告は変わる

歯科医院の広告効果の評価にROASが良いという事を書きましたが、実際にターゲットとなる患者様を獲得していくにはどうしたら良いでしょうか。

この問いを考える時には、世間で“購買者心理”とか“購買行動”と呼ばれるフレームを頭に入れておくと理解しやすくなるかと思います。


購買行動のフレームには、AIDMA、AISAS、AISCEAS、DECAXなど消費者の変化に応じて新しいフレームが提唱されています。SNSや口コミサイトの登場で、何かを選ぶ時の行動はどんどん変化しているためです。

現在の歯科ではAISCEASに近い、以下の流れを頭に入れて置くのが良いと思います。

①注意

②興味、関心(親近感)

③学習(検索)

④比較

⑤検討

⑥アクション、来院

⑦共有、拡散


さて、では歯科医院を選ぶ際に、患者様はどんな行動や心理状況なのでしょうか。

もちろん、全ての人が同じ心理や行動を取ることはないので、自院にマッチした患者様の場面を把握、イメージすることが必要ですが、今回は比較的よくある2つのパターンで考えてみたいと思います。


1つめは既に痛みが出て早く何とかしたい患者様です。 この方達の歯への意識を考えると、緊急度は高いものの、痛みが出るまで放っているので、重要度は比較的低いのでは無いかと推測出来ます。

この患者様は痛みによって、購買心理の最初のステップである「注意、興味」が生まれています。つまりこの方達に対しては需要喚起を促すようなプッシュ型(発信型)のコンテンツは不要で、純粋に歯科医院の比較検討に入ります。

さらに言えば、この方達は「歯科医院に行かない」という選択肢はほぼ無いので、近所の競合医院に勝てれば良いのです。 こういった患者様は緊急度が高いケースが多いので「今行けるところ」「会社や家から近いところ」などの条件が優先度高くなるケースが多いのが分かります。 こうした患者様の心理を推測してみます。

①注意 最近歯が染みるなぁ。まぁまだ我慢できるし良いかな。

②興味、関心 我慢できないくらいに痛みが強くなってきた…

③学習(検索)  家(会社)の近くにはどんな歯医者があるだろう。いつも看板で見るところは良いのかな?googleで「〇〇エリア(駅) 歯医者」

④比較  googleマップ、広告メディアで医院の候補を絞り込もう。でも沢山あるし、何で選べば良いか分からないなぁ。とりあえず通いやすくて、綺麗なところにしよう

⑤検討 比較して候補が2〜3院に絞り込めた。口コミを見たり、HPを見たりして問題無さそうか確認しよう。

⑥アクション、来院 痛いから早く行きたい。リアルタイム予約か、それが無ければ電話してみよう。すぐに見てくれるといいな。

⑦共有、拡散 (もしも治療が想像通り満足、想像以上に満足なら)聞かれたら教えてあげよう

こんな感じでしょうか。

一方で、これらの方々は歯に対しての重要度は高くない場合が多いので、痛みが収まれば通院しなくなる可能性も高くなります。 ですので、院内でのコミュニケーション設計もしっかりと組み立てなければ、栓の抜けたお風呂にお湯を溜めるような状態が始まってしまいます。


もう一つは、何らかの悩みを持ってじっくりと歯科医院を探している患者様です。

悩みを持つきっかけによっても行動は変わっていきますが、例えばテレビや雑誌でインプラントの紹介を見たり、例えば家族や友達に「歯が黄色いね」と言われたり、例えば銀歯が気になって仕事中も笑顔が作れない接客業の方だったり。 この方達は直接的に「インプラントにしたい」「ホワイトニングをしたい」「セラミックにしたい」という顕在化されたニーズではなく、日常に漫然とした「不」の気持ちを抱えています。 

単独の歯科医院でこれらの新規の方々に向けて広告を発信してリーチし、注意を集め、関心を持たせるだけのコンテンツを作成するのはコスト的にもリソース的にも難易度が高いのですが、上手くターゲットを絞り込めれば、リスティングや講演会などを活用しコンテンツで喚起していく事はできます。 (上手く喚起が出来ても、その後に比較のフェーズが来るのでコスト効率は悪化する場合がありますが、ファーストリーチを獲得し判断軸(知識)を提供することでアクション率を上げるなどの手法をとればコスト効率を悪化させずにグロスを増やせる可能性が出てきます。)

さて、こうして日常の不に対する解決策を知った患者様はどうするか。 「インプラントって方法があったのか」「歯を白くする方法があるのか」「セラミックにすればコンプレックスがなくなるかも」と関心を持った患者様はそれがどんなものでいくら位かかるのか調べ始めます。

ある程度の判断軸が出来ると、比較のフェーズに入り、そしてアクション(予約)をします。 これらの方々は、緊急度は高くないものの、日常の不を認知し、歯についての知識を得ているのである程度重要度も高まっていることが考えられます。 また、自分自身の判断軸で医院を選んでいるので、選んだ医院への心理的な繋がり(信頼度)も他の患者様より高い事が期待できるはずです。

こうした患者様が増えてくれば、マッチング精度が高まりCLを獲得しやすくなりますし、先生の目指す(やりたい)治療に取り組みやすくなります。

こうした患者様の心理の流れを推測してみます。

①注意  この広告何度も見るなぁ

②興味、関心(親近感) あれ、セラミックにしたらもう商談中に銀歯を気にしなくても済むんじゃないかな?

③学習(検索) どのくらいの金額なんだろう?どこでやっても同じなのかな?あれ、白い詰め物にも色んな種類があるんだ!

④比較  金額的には〇万円くらいで収まればいいけど…その金額くらいで、行ける範囲の医院はどこだろう。

⑤検討 候補に出した医院の口コミや評価はどうだろう。高いお金を出すから不安な口コミがあるところは出来るだけ避けよう。

⑥アクション、来院 今すぐに困っている訳じゃないから、ちゃんと予約を取って説明を受けたい。

⑦共有、拡散 同じような事で悩んでる人が居たら「こんな方法があるよ」と教えてあげたい。 

と、こんな感じでしょうか。


現在歯科医院に通院している方の中では、前者の数の方が圧倒的に多いと思いますが、一般の方にインタビューをしてみると、歯や口の環境が万全!と言う人は少ないです。 つまり、悩みやもっとこうなれば良いなという思いは持っている方が多いのです

それなのにこうした方々が歯科医院に積極的に来ないのは何故でしょうか… 

今回は代表的な患者様心理の移り変わりの例を書かせていただきました。

次回は悩みがあるのに歯科医院に来ない多くの人が、同じような所でスタックしていることについて書きたいと思います。 ここが分かれば、医院のありたい姿と売上を両立させる一つのヒントになるかもしれませんので、次回の記事もご参考にしていただければ幸いです。  


一般の方々のインタビュー結果など、もう少し詳しく聞きたいなどのご要望がありましたら、是非下記のリンクからお気軽にお問い合わせ下さい。 


with屋

歯科医院向けマーケティングパートナーのwith屋。 歯科医院のマーケティング改善の提案・伴走支援を行っています。 マーケティング戦略~企画・実行・改善までを支援し、一貫性ある患者コミュニケーション設計が可能です。 コンサルティング・アドバイザリーに閉じず、実装までを“提案の主体者”として伴走するため、「実行」のハードルが下がります。