歯科医院の専門性を経営に活かすには

以前「歯科医院のマーケティングは競合対策のためか?」の記事にも書きましたが、私は本当の意味でのマーケティングによって歯科医院と患者様のミスマッチを減らすことで、その歯科医院だけでなく業界にとっても良いスパイラルが生まれると考えています。

患者様が自分に合った歯科医院に出会い、歯科医院への苦手意識が減っていくことで業界GDPが向上していくという理由からです。

そして、先生方のお話を伺うと、自分の得意とする治療を出来る限り制限なく(自費を含め)行いたいという想いを持たれている先生が多いです。


信頼出来る良い治療をしてくれる医院と出会いたい患者様と、得意とする良い治療を行いたい歯科医院。この両者がいるにも関わらず、何故ミスマッチが絶えないのか。


“ミスマッチ”という状態を患者様側の視点から見ると大きく2つのパターンがあります。

1つ目は、単純に自分の症状や求める治療に合っていない歯科医院を選んでしまっている場合。

2つ目は、きちんと合った歯科医院に出会っているにも関わらず、それを理解出来ておらずに信頼出来ていない場合。

このように捉えると、ミスマッチの最大の要因は医院と患者様のコミュニケーション不足と言えるのではないでしょうか。

ここでいうコミュニケーションとは、対面で行うものに限らず、メディアを通じた広告やリコールのお知らせなどの非対面のものも含めてです。

では、どのようにコミュニケーションを改善していけば、自院の専門性を理解し喜んでくれる患者様が増えるのか、2つのケースについて書いていきたいと思います。


まず1つ目の、どのように出会うか?です。

歯科医院の本質的な価値は治療です。それに付随する価値として、立地や利便性などが存在しますが、現状では後者で歯科医院選びをしている患者様が多くいらっしゃいます。

医院側の視点で考えれば、法的な制限や、一般歯科的な打ち出しをしなければ新患が減って経営が成り立たなくなってしまうのではないかという恐怖から、歯科医院の広告は金太郎飴のようにどこも同じような打ち出しになっています。

もちろん広告上で専門性に100%振り切るのは悪手ではありますが、自院がどういうことをやりたいのか?を“きちんと伝わるように”伝えていく必要があります。


「いやいや、ちゃんとHPにもポータルサイトにも書いてるよ」という思いをお持ちかもしれません。ただ前回の記事でも書きましたが、とあるポータルサイトでは世田谷×矯正で250件の歯科医院が出てきます。これだけ数ある歯科医院の中から自院を選んでいただく理由が判別出来るようになっているでしょうか。…かといって、難しい専門的なことを書いても多くの患者様は理解が出来ません。

だからこそ、自院のターゲットとなる患者様がどのように歯科医院選びをしているかを把握し、改善を積み重ねていく必要があります。

例えば…自費での治療をメインとする場合、患者様の一般的な感覚からすれば大きい出費になります。

仮にご自身が30万円のスーツを仕立てようとしたら、どのような広告なら「このテーラーで仕立てよう」となるでしょうか。量販店のようなチラシ的な文言や写真・デザインで「ここにしたい」となるでしょうか。もしくは、今では3万円程度でオーダーが出来るテーラーも出てきていますが、そのような場合はいかがでしょうか。

つまり、自院の治療を受けてほしい患者様のセグメントによって、HPのデザインや書体、ポータルサイトの画像、見出しは変えていかなくてはなりません。

その観点を持って、自院の広告を見直した時に、思い描く患者様像が「ここだ!」と思ってくれるようになっているでしょうか。

今現在は、そういった広告上でのコミュニケーションを放っておいても患者様が来てくれているかもしれません。しかし、近所に自院よりも新しく設備の整った医院が出来た時にも、継続して自院の専門性を喜んでくださる患者様に来ていただくには、そういった改善を日頃から行っておくことが優位性になります。


またもう一つ、広告以外でも、紹介という既存患者様を通じた間接コミュニケーションの設計もしていく必要があります。これについては、2つ目の話にもつながってきますが、以前の記事で書いたCL(カスタマロイヤルティ)を高めていく事が前提になります。

CLが高まるような施策を敷いている上で、全ての患者様が紹介をしてくれるわけではありません。よく紹介をしてくれる患者様と、そうでない患者様は比較的に分かれる傾向があります。紹介をしてくれる患者様はほぼ間違いなく自院のファンになってくれていますので、また紹介したいと思っていただけるようなコミュニケーションフローを作っておきましょう。自分が良いと思った物を周りの人に発信してくれるファンを何人作れるかによって、その後の固定費(広告費)を削れるかどうかの分かれ目になります。

また、紹介で来た患者様は元々のファンの方と属性が近いケースが多いので、またファンになってくださる可能性も比較的高くなります。紹介の仕組みが回り、いい循環が出来れば、患者様不足を恐れて一般歯科的な広告を減らしていっても良くなるので、さらに自院の専門性を活かせる患者様の比率を高めていけるようになります。



2つ目は、患者様の求めるものと医院の専門性が合っているにも関わらず、信頼関係が上手く作れていない場合です。

これは簡単に言えば、以前の記事で書いた通り、CLを高めていく事で解決が出来ます。

おさらいになりますが、広告を見る、HPなどをみる、予約する、来院する、予診票を書く、診察を受ける、会計をする、次回予約をする、トラブル時の対応など、患者様が体験する一連の流れであるCX(顧客体験=カスタマエクスペリエンス)をフルに活用することがCLを上げていくポイントになります。

例えば、1つ目に書いたように、30万円のスーツを仕立てようと広告を見て、「ここだ!」というお店を見つけて来店したとします。その際、どのような対応であれば「ここに来てよかった」と思うでしょうか。店構え、店内に入った時の迎え入れ、態度や服装、商品の説明、採寸の正確性、お取引の今後の流れ、会計時の選択肢などなど色々な観点があります。

もちろん、歯科医院とは違いますが、患者様が普段高額商品を買うときにどのような対応を受けているのか?それと大きなGAPが出ていて、違和感を持たれてしまうところはないか?は考えておくべき観点です。


1つ目のケースの解説時に、「歯科医院の本質的な価値は治療だ」と申し上げました。そこに変わりはありません。ただ、自費をメインにし保険診療ではなくそちらを選択していただくには、そういった付随的価値を提供していく方が、患者様は納得感を持って選択してくれやすいというお話です。

受付の態度が悪くても、治療の説明がなくても、治療そのもののスキルは変わらないかもしれません。ただ、その素晴らしいスキルに投資・チャレンジをしていただくには、患者様が心理的・金銭的なハードルを乗り越えるお手伝いをして差し上げなくてはいけません

日々のコミュニケーションによって、患者様との関係性を構築し信頼を獲得出来れば、自ずと患者様は先生の言葉に興味を示して下さいます。

自院に来て下さる患者様が求めているのはどんな事なのか、アンケートやヒアリングで明らかにしていく事が第一歩です。


このコミュニケーション設計はマーケティングにおいてとても重要なステップですが、どのような患者様をターゲットにするのか、そのターゲットに刺さる広告はどのような内容か、どのような対応が好まれるのか…把握することも、施策を考えることもかなり難易度の高い作業です。

歯科だけでなく一般的な領域で消費者がどのような興味関心を持ち、どのように動いているのか?など幅広い知識や経験が必要になるので、なかなかここに取組み、成果を出せている歯科医院が少ないのが現状です。

しかし、消費者の歯に対する知識が少しずつ高まっている現状を考えると、専門性を求める患者様は今後間違いなく増えてくると考えられます。最初から全てが思い通り上手くいかないかもしれませんが、早くから取り組みマーケティング上の知見を溜めて置くことは、来たるタイミングで大きなアドバンテージになります。

もしも、取り組みたいけど何から手を付ければよいか分からない、出来るだけ成功の確率を高めたいという事がありましたら、下記のフォームより無料のマーケティング診断で、是非ご相談下さい。

with屋

歯科医院向けマーケティングパートナーのwith屋。 歯科医院のマーケティング改善の提案・伴走支援を行っています。 マーケティング戦略~企画・実行・改善までを支援し、一貫性ある患者コミュニケーション設計が可能です。 コンサルティング・アドバイザリーに閉じず、実装までを“提案の主体者”として伴走するため、「実行」のハードルが下がります。