歯科医院のCL(カスタマロイヤルティ)の高め方

前回の記事で、歯科医院はCSではなくCLを高めていく必要があると書きました。
では、CLはどのようにして高めて行くのが良いでしょうか。


例えば、リピート客の多い近所のイタリアンレストランなどイメージしてみて下さい。
アットホームな佇まいの店構えで家も近いし一度家族で行ってみようと思ったとします。
家族で入店すると、ホールのスタッフの方の程よく柔らかい笑顔と「いらっしゃいませ」から席に案内され、ふと店内を見渡すと素朴な木のテーブルに少しレトロなテーブルクロス、楽しそうに食事をするファミリー客に、スタッフと気軽に会話する常連さん。
イメージした通りの店内の雰囲気に安心すると同時に、提供された料理もとても美味しく、大満足で会計を済ませると、帰りに翌朝食べられるバケットをお土産に渡される。
きっと「日常でイタリアン食べるならあの店に行こう」となりそうですよね。
一方で、例えば有名な二郎系ラーメンを思い浮かべて下さい。味の好き嫌いはあるかも知れませんが、学生の街から始まったお店ならではの圧倒的な“量と価格”。
まったく違う特色の飲食店ですが、どちらも確実にファンを獲得しています。
CL獲得はここにヒントがあります。


簡単に言えば、ユーザー(患者様)がその店(院)に抱いている期待以上のものを提供することです。
とは言っても、患者様が何を期待しているか、全てを把握するのは難しいですよね。
でも、来院される患者様の期待するものを、ある程度コントロールする事は出来ます。それは広告(看板や院のハードの雰囲気を含む)と口コミ(サクラだらけのwebサイトのものではなくリアルな家族友人からの口コミ)です。
来院された患者様は何かしらの広告などに触れて、来院のきっかけが出来ます。

その際に、何故その医院に行こうと思ったのか?それが“院に期待するもの”です。

家から近いから、予約が取りやすいからなどの薄めのきっかけの方もいるかと思いますが、家から近い、予約が取りやすいだけの医院なら他にもあります。
その中で、自院が選ばれた理由はなんでしょうか?
またその理由は自院の“ありたい姿”とマッチしているでしょうか。ここにミスマッチが起きていると、CLを獲得していくのはかなり難しくなります。
例えば先程のイタリアンのお店の話で言えば、家から近いだけでなく、ハードの佇まいや看板の雰囲気で、家族で入りやすいアットホームな印象がきっかけです。お店の“ありたい姿”もきっと「アットホームで楽しい食事の場を提供する」などとしているので、スタッフの方の接客にも表れているのでしょう。そこに、美味しい料理(提供サービスの本質)が伴っており、更にお土産というサプライズ的な想定外のポジティブ要素が加わることで、ユーザーの期待を超えていくわけです。



さて、では患者様が医院に期待するものをどのように設定し、それ以上のものをどのようにして提供していくかです。

広告を見る、HPなどをみる、予約する、来院する、予診票を書く、診察を受ける、会計をする、次回予約をする、トラブル時の対応など、患者様が体験する一連の流れをCX(顧客体験=カスタマエクスペリエンス)と言います。
このCXをフルに活用することがCLを上げていくポイントになります。
広告やHPなど予約前の段階では、患者様のどの部分のニーズを満たす事ができるのか、またそれはどのくらいなのか?という期待値調整を行います。(歯科医院の広告は制限が多いので難しいですが表現や写真によって変えられます)

この期待値を低くすれば医院に患者様が来なくなってしまいますし、高くすれば来院後にそれ以上のものを提供するのが難しくなってしまいます。

その期待値に対して、予約以降のプロセスで超えていくような施策を打っていくことで、CLを獲得していくのです。

予約の電話応対・リアルタイム予約などのシステム、来院時の迎え入れ、予診票を渡す際の説明の仕方、チェアへの誘導、治療方針の説明などの顧客接点があります。もちろん本質は治療そのものですが、治療の善し悪しを患者様が理解・把握するのには時間がかかったり、最後まで分からなかったりするので、それを分かるようにして差し上げることも大切な施策だと思います。

こういった一連の体験(CX)の中で患者様の期待を超えてCLを獲得していけているか、反応をモニタリングしながら、施策の改善を継続的に行っていく必要があります。(施策改善の詳細は「マーケティングの流れ」の記事をご覧ください)

こういった事を整えていく事がマーケティングの役割であり、記事の中で何度も書いているようにマーケティングの定義を広告に限定している限り、こういった仕組み作りは絶対に出来ていきません。


例えばHPや広告に、スタッフ皆様の優しそうな笑顔の写真に「当院はスタッフ全員が患者様に寄り添い信頼される●●●」などと書いているのに、来院したときに受付の方に無視されたらどう思うでしょうか。登場した先生がコミュニケーションもそこそこにチェアを倒し始めたらいかがでしょうか。

逆に、「職人気質で寡黙な性格だけどインフォームドコンセントを大切にしてて丁寧な説明をしてくれるよ」という口コミを聞いて来院した患者さんに、少し先生が笑顔で話しかけるだけで「あの先生、本当は優しくて患者想いなのね」となるわけです。そんな寡黙な先生が、一連の治療が終わった後、歯磨き粉を渡して、「これで歯磨きを頑張ってください。無くなったらメンテナンスに来てくださいね。来なかったら、歯磨きしていないんじゃないかと思ってお手紙送りますよ。」などと言えば、患者様への想いはしっかりと伝わるはずです。信頼が出来ていない状態でこれを言われれば営業感が強くなりますが、信頼があれば自分を想ってくれる一言になるのです。

同じことや行動をしても、事前の患者様の期待値や先生・スタッフの皆様のキャラクターによっても変わります。また、ターゲットとしている患者様が普段行くようなお店やサービスの嗜好によっても求めるレベルは変わります。

どんなターゲットに、どんな期待値を渡し、それをどのように超えていくのか。(誰に、何を、どのように)

これは、ターゲットとなる患者様の日常生活や触れているものをリアルにイメージし、歯科医院のCXをどのように組み立ててCLを獲得していくのか、を考えていくという事です。


私は先達のコンサルタント諸先輩方に比べればこの業界は短く浅学ですし、治療に付随するようなコンサルティングを、プロで、医療の主役である先生にお話しするようなことは出来ません。

ただ医院だけでなく様々な業種の1,000以上の個人事業主から上場企業まで、経営にヒットするマーケティングサポートをさせていただいてまいりましたので、様々なタイプの患者様の日常生活をイメージし、どのようなキャラクターの先生やスタッフの皆様がどのような行動をすればターゲットとなる患者様が何を感じるか、については自信を持ってお話しが出来るかと思います。

無料マーケティング診断では、広告や応対など拝見させていただき、上記のようなお話をさせていただくことも可能です。是非お気軽にお問い合わせいただき、歯科医院のマーケティングについてお話が出来れば幸いです。


with屋

歯科医院向けマーケティングパートナーのwith屋。 歯科医院のマーケティング改善の提案・伴走支援を行っています。 マーケティング戦略~企画・実行・改善までを支援し、一貫性ある患者コミュニケーション設計が可能です。 コンサルティング・アドバイザリーに閉じず、実装までを“提案の主体者”として伴走するため、「実行」のハードルが下がります。